秋風に山吹の瀬の鳴るなへに
天雲翔る雁に逢へるかも
- 歌の意味
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秋風に山吹の瀬が音を立てるのにつれて、空の雲間を翔る雁に出会ったことだ。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1700
詞書は前の歌に続き「宇治川にして作る歌二首」
秋風の中で山吹の瀬が鳴り響くのにあわせて、空高く飛ぶ雁に出会ったと喜ぶ歌である。川音と雁の姿が重なり、秋の到来を広やかにとらえている。
宇治川で作った歌二首の二首目で、山吹の瀬は宇治川の瀬とされる。前歌が雁を音で推し量るのに対し、この歌は実際に雁に出会ったと詠み、聞くと見るとの対をなしている。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。
初句「秋風に」は、原文では「金風」と書かれ、五行説で秋を金にあてることによる表記である。
二句「山吹の瀬の」は、宇治川の瀬の名を示す。
三句「鳴るなへに」は、鳴るのにつれて、の意で、「なへに」はある事柄と同時に別の事柄が起こることを表す。前歌第千六百九十九首の「響むなり」と同じく、川の音が一首の起点となっている。
四句「天雲翔る」は、空の雲の間を高く飛ぶ、の意である。
結句「雁に逢へるかも」は、雁に出会ったことだ、の意で、存続の「り」の連体形「る」に詠嘆の「かも」が付く。八音の字余りとなっている。
あまくも:空の雲
かける:空高く飛ぶ
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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巨椋の入江響むなり射目人の 伏見が田居に雁渡るらし
- 次の歌
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さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の 聞こゆる空ゆ月渡る見ゆ