さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の
聞こゆる空ゆ月渡る見ゆ
- 歌の意味
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もう真夜中と夜は更けてしまったらしい。雁の鳴き声が聞こえる空を、月が渡って行くのが見える。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1701
詞書「弓削皇子に献る歌三首」
雁の声が聞こえる夜空を月が渡って行くのを見て、夜がすっかり更けたことを知る歌である。音と光とを重ねた静かで澄んだ秋の夜の情景で、人麻呂歌集の中でも名歌として知られる。
弓削皇子に献った歌三首の一首目である。本巻の第千六百九十九首第千七百首に続いて雁を詠んでおり、雁の歌が連なって配されている。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。弓削皇子は天武天皇の皇子で、文武天皇三年(699)に没した。
初句「さ夜中と」は、真夜中であると、の意で、「さ」は語調を整える接頭語である。
二句「夜は更けぬらし」は、夜は更けてしまったらしい、の意で、完了の「ぬ」に推量の「らし」が付く。ここで句切れとなる。
三句「雁が音の」は、雁の鳴き声の、の意である。
四句「聞こゆる空ゆ」は、聞こえる空を通って、の意で、「ゆ」は経由する所を示す。
結句「月渡る見ゆ」は、月が渡って行くのが見える、の意である。四句の「聞こゆる」と結句の「見ゆ」とで聴覚と視覚を対にし、二句の「らし」の根拠を示している。
かりがね:雁の鳴き声、また雁そのもの
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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秋風に山吹の瀬の鳴るなへに 天雲翔る雁に逢へるかも
- 次の歌
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妹があたり繁き雁が音夕霧に 来鳴きて過ぎぬすべなきまでに