妹があたり繁き雁が音夕霧に
来鳴きて過ぎぬすべなきまでに
- 歌の意味
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妻の家のあたりでしきりに鳴く雁が、夕霧の中を来て鳴いて過ぎて行った。どうしようもないほどに心を乱して。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1702
詞書は前の歌に続き「弓削皇子に献る歌三首」
妻の家のあたりでしきりに鳴く雁が、夕霧の中を鳴きながら飛び過ぎて行き、どうしようもないほど心が乱れると詠む歌である。雁の声に恋しい人への思いをかき立てられる心が表れている。
弓削皇子に献った歌三首の二首目である。前歌に続いて雁の声を詠むが、前歌の澄んだ月夜から夕霧の中へと場面を移している。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。弓削皇子は天武天皇の皇子で、文武天皇三年(699)に没した。
初句「妹があたり」は、妻の家のあたり、の意で、六音の字余りとなっている。
二句「繁き雁が音」は、しきりに鳴く雁の声をいい、前歌第千七百一首の三句「雁が音の」と同じ語を用いている。
三句「夕霧に」は、夕方に立ちこめる霧の中に、の意である。
四句「来鳴きて過ぎぬ」は、来て鳴いて過ぎて行った、の意で、ここで句切れとなる。
結句「すべなきまでに」は、どうしようもないほどに、の意で、心の乱れを最後に示す倒置となっている。
あたり:その付近、そのあたり
すべ:手段、方法
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の 聞こゆる空ゆ月渡る見ゆ
- 次の歌
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雲隠り雁鳴く時は秋山の 黄葉片待つ時は過ぐれど