御食向ふ南淵山の巌には
降りしはだれか消え残りたる
- 歌の意味
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南淵山の岩には、先ごろ降ったはだれ雪が消え残っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1709
詞書「弓削皇子に献る歌一首」
南淵山の岩に白く見えるのは、以前に降ったはだれ雪が消え残っているのだろうかと詠む歌である。春先の山に残る雪の白さを印象深くとらえている。
弓削皇子に献った歌である。南淵山は奈良県高市郡明日香村稲渕の山である。左注に右は柿本朝臣人麻呂の歌集に出づとあり、本巻の第千六百八十二首からこの歌までが人麻呂歌集から採られたことを示している。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。弓削皇子は天武天皇の皇子で、文武天皇三年(699)に没した。
初句「御食向ふ」は、南淵にかかる枕詞である。御食に供える蜷の「みな」の音からかかるとされる。
二句「南淵山の」は、雪の残る山の名を示す。
三句「巌には」は、山の大きな岩には、の意である。
四句「降りしはだれか」は、降ったはだれ雪であろうか、の意で、疑問の係助詞「か」が結句の「たる」と係り結びをなす。
結句「消え残りたる」は、消え残っている、の意で、存続の「たり」の連体形で結ぶ。本巻の第千六百九十五首の「み雪残れり」と同じく、消え残る雪を詠んでいる。
みけ:神や天皇に供える食物
いはほ:大きな岩
はだれ:まだらに薄く降り積もった雪
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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春草を馬咋山ゆ越え来なる 雁の使は宿り過ぐなり
- 次の歌
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我妹子が赤裳ひづちて植ゑし田を 刈りて収めむ倉無の浜