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白波の浜松の木の手向けくさ
幾代までにか年は経ぬらむ

歌の意味
白波の寄せる浜の松の木に掛けられた手向けの品は、いったいどれほどの年月を経てきたのだろうか。
鑑賞
巻第九 雑歌 1716

詞書「山上の歌一首」
 白波の寄せる浜辺の松の木に掛けられた手向けの品を見て、どれほどの年月を経てきたのだろうかと思いやる歌である。旅の安全を祈った古人の心と、過ぎ去った長い時の流れに思いを致している。
 左注には、或いは川島皇子の御作歌という、とある。巻第一の第三十四首にも、紀伊国行幸の折の川島皇子の作として、二句を「浜松が枝の」、結句を「年の経ぬらむ」とするほぼ同じ歌が収められている。浜松は、有間皇子ゆかりの紀伊の岩代の浜松を指すと考えられている。
 作者の山上憶良は奈良時代の官人歌人で、遣唐使に随行して唐に渡り、のちに筑前守となった。題詞の「山上」は憶良を指すとされる。

 初句「白波の」は、白波の寄せる、の意で、浜にかかる。
 二句「浜松の木の」は、浜辺の松の木の、の意である。巻第一の第三十四首では「浜松が枝の」となっている。
 三句「手向けくさ」は、神に手向ける品をいい、旅の無事を祈って松の枝に掛けられた幣を指す。
 四句「幾代までにか」は、どれほどの代まで、の意で、疑問の係助詞「か」が結句の「らむ」と係り結びをなす。
 結句「年は経ぬらむ」は、年月を経たのだろうか、の意で、「ぬ」は完了、「らむ」は現在推量の助動詞である。

たむけくさ:神に手向けるための品、幣
いくよ:どれほど多くの代、年月
作者
山上憶良
出典
万葉集
前の歌
楽浪の比良山風の海吹けば 釣りする海人の袖返る見ゆ
次の歌
三川の淵瀬もおちず小網さすに 衣手濡れぬ干す子はなしに