照る月を雲な隠しそ島蔭に
我が舟泊てむ泊り知らずも
- 歌の意味
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照っている月を、雲よ隠さないでくれ。島陰に私の舟を泊めようにも、その泊まる所がわからないのだから。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1719
詞書「春日蔵の歌一首」
夜の船旅で、島陰に舟を泊めようとしても泊まる所がわからないので、照る月を雲よ隠さないでくれと願う歌である。暗い海の上の不安と、月の光への頼みとが表れている。
左注には、或る本に小弁の作とあると記し、さらに姓氏のみを記して名を記さないもの、名のみを称して姓氏を称さないものがあるが、古い記録に従ってそのまま載せ、以下もこれに倣う、と編纂の方針を述べている。本巻の第千七百三十二首は、下の句を「我が舟泊てむ泊り知らずも」と同じくしている。
作者の春日蔵首老は、もとは僧で弁基と称し、大宝元年(701)に朝廷の命によって還俗した人物である。
初句「照る月を」は、夜の海を照らす月をいう。
二句「雲な隠しそ」は、雲よ隠さないでくれ、の意で、「な〜そ」は禁止を表す。ここで句切れとなる。
三句「島蔭に」は、島の陰になって風波を避けられる所に、の意である。
四句「我が舟泊てむ」は、私の舟を泊めよう、の意で、前歌第千七百十八首の結句「泊てにけむかも」に続いて「泊つ」の語が重ねられている。
結句「泊り知らずも」は、泊まる所がわからないことよ、の意で、二句の願いの理由を最後に示している。本巻の第千七百三十二首とまったく同じ下の句である。
しまかげ:島の陰になって風波を避けられるところ
とまり:船が泊まる所、港
- 作者
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春日蔵首老
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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率ひて漕ぎ行く舟は高島の 安曇の港に泊てにけむかも
- 次の歌
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馬並めてうち群れ越え来今日見つる 吉野の川をいつかへり見む