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吉野川川波高み滝の浦を
見ずかなりなむ恋しけまくに

歌の意味
吉野川の川波が高いので、滝の浦を見ないままになってしまうのだろうか。あとで恋しく思うだろうに。
鑑賞
巻第九 雑歌 1722

詞書は前の歌に続き「元仁の歌三首」
 吉野川の川波が高いので、滝の浦を見ずに終わってしまうのだろうか、見なければあとで恋しく思うだろうに、と惜しむ歌である。
 元仁の歌三首の三首目である。滝の浦は宮滝付近の、川の入り込んだところとされる。
 作者の元仁は伝未詳で、僧の名とする説もある。左注によれば、本歌は柿本人麻呂歌集に出る歌である。

 初句「吉野川」は、前歌第千七百二十一首の三句と同じ語で、一連をつないでいる。
 二句「川波高み」は、川波が高いので、の意で、「み」は原因や理由を表す接尾語である。
 三句「滝の浦を」は、見たいと願う場所を示し、六音の字余りとなっている。
 四句「見ずかなりなむ」は、見ないままになるのだろうか、の意で、疑問の係助詞「か」が「む」と係り結びをなす。
 結句「恋しけまくに」は、恋しく思うだろうに、の意で、「恋しけまく」は恋しいことをいうク語法である。

うら:川や海が陸地に入り込んだところ
作者
元仁
出典
万葉集
前の歌
苦しくも暮れゆく日かも吉野川 清き川原を見れど飽かなくに
次の歌
かわづ鳴く六田の川の川柳の ねもころ見れど飽かぬ川かも