古典和歌stream

見まく欲り来しくもしるく吉野川
音のさやけさ見るにともしく

歌の意味
見たいと思ってはるばるやって来た甲斐があって、吉野川の川音のすがすがしいことよ。見ても見足りないほどに。
鑑賞
巻第九 雑歌 1724

詞書「島足の歌一首」
 吉野川を見たいと思ってはるばる来た甲斐があって、川音のすがすがしさは、いくら見ても見足りないほどだとたたえる歌である。
 左注によれば、本歌は柿本人麻呂歌集に出る歌である。
 作者の島足は伝未詳である。

 初句「見まく欲り」は、見たいと思って、の意で、「見まく」は「見る」のク語法である。
 二句「来しくもしるく」は、やって来た甲斐がはっきりとあって、の意で、「来しく」はク語法、「しるく」ははっきりとの意である。
 三句「吉野川」は、たたえる川の名を示す。
 四句「音のさやけさ」は、川音のすがすがしさよ、の意で、形容詞の語幹に「さ」を付けて名詞とし、詠嘆をこめる。ここで句切れとなる。本巻の第千七百三十七首の結句「見るがさやけさ」と同じ「さやけさ」の語を用いている。
 結句「見るにともしく」は、見ても見足りないほどに、の意で、心ひかれて飽き足りない思いを表す。

さやけさ:すがすがしいこと、清らかなこと
作者
島足
出典
万葉集
前の歌
かわづ鳴く六田の川の川柳の ねもころ見れど飽かぬ川かも
次の歌
いにしへの賢しき人の遊びけむ 吉野の川原見れど飽かぬかも