我が畳三重の川原の磯の裏に
かくしもがもと鳴くかはづかも
- 歌の意味
-
三重の川原の岩陰で、いつまでもこうしていたいと鳴いている河鹿であることよ。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌 1735
詞書「伊保麻呂の歌一首」
三重の川原の岩陰で鳴くかじかの声を、いつまでもこうしていたいと鳴いているのだと聞きなした歌である。清らかな川辺で満ち足りた心を、かじかの声に託している。
三重の川原は、現在の三重県四日市市を流れる内部川の川原とする説がある。「我が畳」は、畳を幾重にも重ねることから「三重」にかかる枕詞である。
作者の伊保麻呂は伝未詳である。
初句「我が畳」は、畳を重ねることから「三重」にかかる枕詞である。
二句「三重の川原の」は、かじかの鳴く川原の地名を示す。
三句「磯の裏に」は、川中の岩の陰に、の意である。六音の字余りとなっている。
四句「かくしもがもと」は、このようにありたいものだと、の意である。「し」は強めの助詞、「もがも」は願望を表す。
結句「鳴くかはづかも」は、鳴く河鹿であることよ、の意で、「かも」は詠嘆を表す。かじかの声を人の願いのように聞きなしている。
いそ:水辺や水中の岩
かはづ:河鹿、清流に住み美しい声で鳴く蛙
- 作者
-
伊保麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
高島の安曇の港を漕ぎ過ぎて 塩津菅浦今か漕ぐらむ
- 次の歌
-
山高み白木綿花に落ちたぎつ 夏身の川門見れど飽かぬかも