三栗の那賀に向へる曝井の
絶えず通はむそこに妻もが
- 歌の意味
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那賀の里に向かい合う曝井の水が絶えないように、絶えず通おう。そこに妻がいてくれたらよいのに。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1745
詞書「那賀郡の曝井の歌一首」
那賀の曝井の水が絶えず湧くように、自分も絶えず通いたい、そこに妻がいればよいのにと詠む歌である。土地の名所をたたえつつ、旅先の寂しさを妻への願いとして表している。
曝井は常陸国那賀郡(現在の茨城県水戸市付近)にあった泉で、村の女たちが布をさらしたことからその名があると常陸国風土記に伝えられる。泉に集まる女たちの姿が、妻を願う心を誘っている。
作者の高橋虫麻呂は奈良時代前期の歌人で、藤原宇合が常陸守であった頃にその下僚として仕えたと考えられている。各地の伝説や東国の風土を題材とした長歌に優れる。本歌は高橋虫麻呂歌集から採られたもので、虫麻呂自身の作を中心とすると考えられている。
初句「三栗の」は、いがの中に三つの実が並ぶと中の実を「なか」ということから、「那賀」にかかる枕詞である。
二句「那賀に向へる」は、那賀の地に向かい合っている、の意である。
三句「曝井の」は、布をさらす泉を示す。ここまでが、泉の水が絶えないことから「絶えず」を導く序詞となっている。
四句「絶えず通はむ」は、絶えず通おう、の意で、「む」は意志を表す。
結句「そこに妻もが」は、そこに妻がいてほしい、の意で、「もが」は願望を表す。
さらしゐ:布をさらすのに用いた泉
かよふ:男が女のもとへ行き来する
- 作者
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高橋虫麻呂(虫麻呂歌集所出)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大橋の頭に家あらばま悲しく 独り行く子に宿貸さましを
- 次の歌
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遠妻し多賀にありせば知らずとも 手綱の浜の尋ね来なまし