遠妻し多賀にありせば知らずとも
手綱の浜の尋ね来なまし
- 歌の意味
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遠く離れた妻がこの多賀にいるのなら、道を知らなくても、手綱の浜の名のように尋ねて来るだろうに。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1746
詞書「手綱の浜の歌一首」
遠く離れて住む妻がこの多賀の地にいるのなら、道を知らなくても尋ねて来るだろうにと、叶わぬ思いを詠む歌である。旅先の浜の名に寄せて、妻に会えない寂しさを表している。
手綱の浜は常陸国多賀郡(現在の茨城県高萩市付近)の浜とされる。「手綱」と「尋ね」の音の重なりを生かした、地名を詠み込む趣向の歌である。
作者の高橋虫麻呂は奈良時代前期の歌人で、藤原宇合が常陸守であった頃にその下僚として仕えたと考えられている。各地の伝説や東国の風土を題材とした長歌に優れる。本歌は高橋虫麻呂歌集から採られたもので、虫麻呂自身の作を中心とすると考えられている。
初句「遠妻し」は、遠く離れて住む妻が、の意である。「し」は強めの助詞である。
二句「多賀にありせば」は、多賀にいたならば、の意で、事実に反する仮定を表す。「多賀」には「高」の意を読み取る説もある。
三句「知らずとも」は、道を知らなくても、の意である。
四句「手綱の浜の」は、浜の名を示し、「たづな」の音から結句の「尋ね」を導く。「の」は、〜のように、の意である。
結句「尋ね来なまし」は、尋ねて来るだろうに、の意である。二句の「ありせば」と呼応する反実仮想の「まし」で結び、実際には妻がいない寂しさを表す。
とほづま:遠く離れて住む妻
たづぬ:探し求めて行く
- 作者
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高橋虫麻呂(虫麻呂歌集所出)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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三栗の那賀に向へる曝井の 絶えず通はむそこに妻もが
- 次の歌
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我が行きは七日は過ぎじ竜田彦 ゆめこの花を風にな散らし