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我が行きは七日は過ぎじ竜田彦
ゆめこの花を風にな散らし

歌の意味
私の旅は七日を過ぎはしない。竜田彦よ、決してこの花を風で散らさないでくれ。
鑑賞
巻第九 雑歌 1748

詞書は前の歌に続き「春三月、諸卿大夫等の難波に下る時の歌二首 并せて短歌」の反歌
 自分の旅は七日もかからないから、それまで竜田彦は決して桜を風で散らさないでほしいと、風の神に願う歌である。帰り道にもう一度花を見たいという思いが、神への呼びかけとなっている。
 本巻の第千七百四十七首の長歌に添えられた反歌である。長歌は、竜田山の小椋の嶺に咲く桜が風と雨で上の枝から散ったのを見て、下の枝の花は旅行く君が帰るまで散らないでほしいと詠んでいる。天平六年(734)三月の聖武天皇の難波行幸の折とする説がある。
 作者の高橋虫麻呂は奈良時代前期の歌人で、藤原宇合が常陸守であった頃にその下僚として仕えたと考えられている。各地の伝説や東国の風土を題材とした長歌に優れる。本歌は高橋虫麻呂歌集から採られたもので、虫麻呂自身の作を中心とすると考えられている。

 初句「我が行きは」は、私の旅は、の意である。
 二句「七日は過ぎじ」は、七日を過ぎることはあるまい、の意で、「じ」は打消推量を表す。ここで句切れとなる。
 三句「竜田彦」は、竜田の風の神への呼びかけである。竜田の神は風を鎮める神として祭られた。
 四句「ゆめこの花を」は、決してこの花を、の意で、「ゆめ」は下の禁止と呼応する。
 結句「風にな散らし」は、風で散らすな、の意で、禁止の「な」を用いる。長歌の「散りな乱ひそ」と同じく、花が散らないことを願って結ぶ。

たつたひこ:竜田の風の神
作者
高橋虫麻呂(虫麻呂歌集所出)
出典
万葉集
前の歌
遠妻し多賀にありせば知らずとも 手綱の浜の尋ね来なまし
次の歌
暇あらばなづさひ渡り向つ峰の 桜の花も折らましものを