暇あらばなづさひ渡り向つ峰の
桜の花も折らましものを
- 歌の意味
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時間があるなら、水に浸りながら川を渡って、向かいの峰の桜の花も手折るのに。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1750
詞書は前の歌に続き「春三月、諸卿大夫等の難波に下る時の歌二首 并せて短歌」の反歌
時間があれば、川を渡って向こうの峰の桜も手折りたいのにと、先を急ぐ旅の心残りを詠む歌である。公の旅のため寄り道もできない惜しさが表れている。
本巻の第千七百四十九首の長歌に添えられた反歌である。長歌は、夕暮れに竜田山を越えると、咲いた桜は散り、つぼみはこれから咲き継ぐであろう、あちこちの花の盛りではなくとも、君の旅は今こそすべきである、と詠んでいる。天平六年(734)三月の聖武天皇の難波行幸の折とする説がある。
作者の高橋虫麻呂は奈良時代前期の歌人で、藤原宇合が常陸守であった頃にその下僚として仕えたと考えられている。各地の伝説や東国の風土を題材とした長歌に優れる。本歌は高橋虫麻呂歌集から採られたもので、虫麻呂自身の作を中心とすると考えられている。
初句「暇あらば」は、時間があるなら、の意である。
二句「なづさひ渡り」は、水に浸りながら渡って、の意である。
三句「向つ峰の」は、向かいの峰の、の意である。
四句「桜の花も」は、長歌の「滝の上の桜の花」に続けて、向かいの峰の桜も、と詠む。
結句「折らましものを」は、手折るだろうに、の意である。初句の「あらば」と呼応する反実仮想の「まし」に、逆接の「ものを」が付いて、実際にはできない残念さを表す。
なづさふ:水に浸る、水に漂う
むかつを:向かいの峰
- 作者
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高橋虫麻呂(虫麻呂歌集所出)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が行きは七日は過ぎじ竜田彦 ゆめこの花を風にな散らし
- 次の歌
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い行き逢ひの坂のふもとに咲きををる 桜の花を見せむ子もがも