石上布留の早稲田の穂には出でず
心のうちに恋ふるこのころ
- 歌の意味
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石上の布留の早稲田の稲穂が出るようには、表に出さず、心の中でひそかに恋い慕っているこのごろだ。
- 鑑賞
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巻第九 相聞 1768
詞書は前の歌に続き「抜気大首、筑紫に任けらゆる時に、豊前国の娘子紐児を娶きて作る歌三首」
早稲の穂が出るようには恋心を表に出さず、心の中でひそかに恋い慕っているこのごろの思いを詠む歌である。人目を忍ぶ恋の苦しさを、稲穂のたとえによって表している。
抜気大首の歌三首の二首目である。石上布留は大和国(現在の奈良県天理市)の地名で、筑紫の地にあって大和の地名を用いていることから、古くからある歌句を借りたとする説がある。
作者の抜気大首は伝未詳である。詞書によれば、筑紫に赴任した折に、豊前国の娘子紐児を妻としたという。
初句「石上」は、「布留」にかかる枕詞である。石上は布留を含む地域の名でもある。
二句「布留の早稲田の」は、布留の地の早く実る稲の田の、の意である。ここまでが「穂に出づ」を導く序詞となっている。
三句「穂には出でず」は、稲穂が出るようには表に出さず、の意である。「穂に出づ」は、思いが表に現れることのたとえである。
四句「心のうちに」は、心の中で、の意である。
結句「恋ふるこのころ」は、恋い慕っているこのごろだ、の意で、名詞で結ぶ体言止めとなっている。前歌の明るさとは対照的に、ひそかな恋の思いを述べている。
わさだ:早く実る稲を植えた田
- 作者
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抜気大首
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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豊国の香春は我家紐児に いつがり居れば香春は我家
- 次の歌
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かくのみし恋ひしわたればたまきはる 命も我れは惜しけくもなし