君なくはなぞ身装はむ櫛笥なる
黄楊の小櫛も取らむとも思はず
- 歌の意味
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あなたがいないのなら、どうして身を飾ったりしようか。櫛箱の中の黄楊の小櫛さえ、手に取ろうとも思わない。
- 鑑賞
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巻第九 相聞 1777
詞書は前の歌に続き「石川大夫の遷任して京に上る時に、播磨娘子の贈る歌二首」
あなたがいなくなれば身を飾る気にもなれず、櫛箱の黄楊の櫛さえ手に取ろうと思わないと、別れの悲しみを詠む歌である。身近な櫛を持ち出して、愛する人を失う寂しさを具体的に表している。
播磨娘子の歌二首の二首目である。前歌が春の花に寄せて思い出す未来を詠んだのに対し、本歌は身の回りの日々の暮らしに寄せて悲しみを述べている。
作者の播磨娘子は伝未詳で、播磨国の遊行女婦とする説がある。石川大夫は、養老年間に播磨守であった石川君子を指すと考えられている。
初句「君なくは」は、あなたがいないのなら、の意である。
二句「なぞ身装はむ」は、どうして身を飾ったりしようか、の意の反語で、ここで句切れとなる。
三句「櫛笥なる」は、櫛箱の中にある、の意である。
四句「黄楊の小櫛も」は、黄楊で作った小さな櫛さえ、の意である。
結句「取らむとも思はず」は、手に取ろうとも思わない、の意で、八音の字余りとなっている。前歌の結句「君し偲はむ」の思い出す心に対し、本歌は身を飾る気力も失う心を述べて結ぶ。
くしげ:櫛などを入れておく箱
つげ:黄楊、櫛の材とされた木
よそふ:身を飾る、装う
- 作者
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播磨娘子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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絶等寸の山の峰の上の桜花 咲かむ春へは君し偲はむ
- 次の歌
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明日よりは我れは恋ひむな名欲山 岩踏み平し君が越え去なば