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み越道の雪降る山を越えむ日は
留まれる我れを懸けて偲はせ

歌の意味
越の国への道の、雪の降る山を越える日には、都に留まっている私のことを心にかけて思い出してほしい。
鑑賞
巻第九 相聞 1786

詞書は前の歌に続き「神亀五年戊辰秋八月の歌一首 并せて短歌」の反歌
 越の国へ下る人に、雪の降る山を越える日には、都に残る自分のことを心にかけて思い出してほしいと願う歌である。厳しい山越えの場面に、別れの思いを託している。
 本巻の第千七百八十五首の長歌に添えられた反歌である。長歌は、人として生まれることは難しいのに、たまたま生まれた我が身は、死ぬも生きるも君のままにと思っていたが、君は大君の命令によって地方を治めに朝早く旅立って行くので、残された私は恋しく思うだろう、と女性の立場で詠んでいる。神亀五年(728)八月に、越の国へ赴任する人を送った歌とされる。
 作者の笠金村は奈良時代前期の宮廷歌人で、元正朝から聖武朝にかけて行幸に従って多くの歌を詠んだ。本歌は笠金村歌集から採られたもので、左注には笠朝臣金村の歌の中に出るとある。

 初句「み越道の」は、越の国への道の、の意で、「み」は接頭語である。
 二句「雪降る山を」は、雪の降る山を、の意である。長歌の八月から、越の山に雪が降る頃を思いやっている。
 三句「越えむ日は」は、越えるであろう日には、の意である。
 四句「留まれる我れを」は、都に留まっている私を、の意で、長歌の「留まり居て」を受ける。
 結句「懸けて偲はせ」は、心にかけて思い出してほしい、の意である。「せ」は尊敬の「す」の命令形で、敬意を込めて願う。

こしぢ:越の国への道、北陸道
しのふ:離れている人や物を思い慕う
作者
笠金村(金村歌集所出)
出典
万葉集
前の歌
海神のいづれの神を祈らばか 行くさも来さも船の早けむ
次の歌
布留山ゆ直に見わたす都にぞ 寝も寝ず恋ふる遠くあらなくに