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布留山ゆ直に見わたす都にぞ
寝も寝ず恋ふる遠くあらなくに

歌の意味
布留山からまっすぐに見渡せる都なのに、眠ることもできずに恋しく思っている。遠くはないのに。
鑑賞
巻第九 相聞 1788

詞書は前の歌に続き「天平元年己巳冬十二月の歌一首 并せて短歌」の反歌
 布留山から都がまっすぐに見渡せるほど近いのに、眠ることもできずに都の妻を恋しく思うと詠む歌である。遠くないのに逢えないもどかしさが、かえって恋しさを募らせている。
 本巻の第千七百八十七首の長歌に添えられた反歌である。長歌は、大君の命令によって大和の国の石上布留の里で紐も解かずに丸寝をしていると、着ている衣もよれよれになり、恋しさは募るが顔色に出せば人に知られるので、冬の長い夜を眠らずに妻を恋い慕っている、と詠んでいる。天平元年(729)十二月、公務で布留の里に滞在した折の歌とされる。
 作者の笠金村は奈良時代前期の宮廷歌人で、元正朝から聖武朝にかけて行幸に従って多くの歌を詠んだ。本歌は笠金村歌集から採られたもので、左注には笠朝臣金村の歌の中に出るとある。

 初句「布留山ゆ」は、布留山から、の意である。「ゆ」は起点を表す助詞である。
 二句「直に見わたす」は、まっすぐに見渡せる、の意である。
 三句「都にぞ」は、都に対してこそ、の意である。係助詞「ぞ」は四句の「恋ふる」と呼応する。
 四句「寝も寝ず恋ふる」は、眠ることもできずに恋しく思っている、の意である。三句の「ぞ」を受けて、連体形「恋ふる」で結ぶ係り結びとなる。長歌の「寝も寝ずに我れはぞ恋ふる」を受ける。
 結句「遠くあらなくに」は、遠くはないのに、の意である。「なくに」は打消の「ず」の古い名詞形に「に」が付いたもので、逆接の詠嘆を表す。

い:眠り、睡眠
作者
笠金村(金村歌集所出)
出典
万葉集
前の歌
み越道の雪降る山を越えむ日は 留まれる我れを懸けて偲はせ
次の歌
我妹子が結ひてし紐を解かめやも 絶えば絶ゆとも直に逢ふまでに