我妹子が結ひてし紐を解かめやも
絶えば絶ゆとも直に逢ふまでに
- 歌の意味
-
いとしい妻が結んでくれた紐を、解いたりするものか。切れるなら切れてしまってもかまわない。直接に逢うまでは。
- 鑑賞
-
巻第九 相聞 1789
詞書は前の歌に続き「天平元年己巳冬十二月の歌一首 并せて短歌」の反歌
妻が結んでくれた衣の紐を、直接逢うまでは、たとえ切れても解きはしないと誓う歌である。旅の間も妻への貞節を守る固い決意を表している。
本巻の第千七百八十七首の長歌に添えられた二首目の反歌である。旅立つ時に互いの衣の紐を結び合い、再び逢うまで解かないという当時の習俗に基づく。長歌の「紐解かず丸寝をすれば」を受けて詠まれている。左注によれば、本巻の第千七百八十五首からこの歌までの五首は笠金村の歌の中に出る。
作者の笠金村は奈良時代前期の宮廷歌人で、元正朝から聖武朝にかけて行幸に従って多くの歌を詠んだ。本歌は笠金村歌集から採られたもので、左注には笠朝臣金村の歌の中に出るとある。
初句「我妹子が」は、いとしい妻が、の意である。
二句「結ひてし紐を」は、結んでくれた紐を、の意である。長歌の「紐解かず」を受ける。
三句「解かめやも」は、解いたりするものか、いや解かない、の意の反語で、ここで句切れとなる。
四句「絶えば絶ゆとも」は、切れるなら切れてもかまわない、の意で、同じ語を重ねて強い決意を表す。
結句「直に逢ふまでに」は、直接に逢うまでは、の意である。前歌の結句「遠くあらなくに」の逢えないもどかしさに対し、本歌は逢う日まで耐える決意で一連を結ぶ。
ゆふ:結ぶ
たゆ:切れる、途絶える
- 作者
-
笠金村(金村歌集所出)
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
布留山ゆ直に見わたす都にぞ 寝も寝ず恋ふる遠くあらなくに
- 次の歌
-
旅人の宿りせむ野に霜降らば 我が子羽ぐくめ天の鶴群