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たち変り月重なりて逢はねども
さね忘らえず面影にして

歌の意味
月が改まり、幾月も重なって逢わないけれども、少しも忘れられない。面影に見えて。
鑑賞
巻第九 相聞 1794

詞書は前の歌に続き「娘子を思ひて作る歌一首 并せて短歌」の反歌
 月が改まって幾月も逢わないけれども、面影に見えて少しも忘れられないと詠む歌である。逢えない月日が長くなっても、かえって思いが消えないことを表している。
 本巻の第千七百九十二首の長歌に添えられた二首目の反歌である。前歌で逢えない月日が重なることを嘆いたのを受け、本歌ではそれでも忘れられないと心の内を述べている。左注によれば、長歌からこの歌までの三首は田辺福麻呂歌集に出る歌である。
 作者の田辺福麻呂は奈良時代中期の歌人で、橘諸兄に仕えた造酒司の令史であった。本歌は田辺福麻呂歌集から採られたもので、福麻呂自身の作とする見方が有力である。

 初句「たち変り」は、月が改まって、の意である。
 二句「月重なりて」は、幾月も重なって、の意で、前歌の結句「月の経ぬらむ」を受ける。
 三句「逢はねども」は、逢わないけれども、の意である。前歌の四句「逢はぬ日数多く」を受け、逢えない状態が続くことを示す。
 四句「さね忘らえず」は、少しも忘れられない、の意である。「さね」は下に打消を伴って、少しも、の意を表す。ここで句切れとなる。
 結句「面影にして」は、面影に見えて、の意である。倒置によって、忘れられない理由を結句に置いている。

おもかげ:目の前にいるように浮かぶ姿
作者
田辺福麻呂(福麻呂歌集所出)
出典
万葉集
前の歌
垣ほなす人の横言繁みかも 逢はぬ日数多く月の経ぬらむ
次の歌
妹らがり今木の嶺に茂り立つ 妻松の木は古人見けむ