あしひきの荒山中に送り置きて
帰らふ見れば心苦しも
- 歌の意味
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人気のない山の中に弟を葬り置いて、人々が帰って行くのを見ると、胸が痛むことよ。
- 鑑賞
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巻第九 挽歌 1806
詞書は前の歌に続き「弟の死去を哀しびて作る歌一首 并せて短歌」の反歌
人気のない荒れた山の中に弟の亡骸を葬り、人々が帰って行くのを見て胸が痛むと詠む歌である。弟を独り山中に残して去らなければならないつらさを、葬送の場面によって表している。
本巻の第千八百四首の長歌に添えられた二首目の反歌である。前歌で死別の絶望を述べたのを受け、本歌は葬送の具体的な場面を詠んでいる。左注によれば、本巻の第千八百首からこの歌までの七首は田辺福麻呂歌集に出る歌である。
作者の田辺福麻呂は奈良時代中期の歌人で、橘諸兄に仕えた造酒司の令史であった。本歌は田辺福麻呂歌集から採られたもので、福麻呂自身の作とする見方が有力である。
初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
二句「荒山中に」は、人気のない荒れた山の中に、の意である。
三句「送り置きて」は、亡骸を葬り置いて、の意である。六音の字余りとなっている。
四句「帰らふ見れば」は、人々が帰って行くのを見ると、の意である。「帰らふ」は「帰る」に継続を表す「ふ」が付いた形で、葬送の人々が次々と帰って行くさまを表す。
結句「心苦しも」は、胸が痛むことよ、の意で、「も」は詠嘆を表す。
あらやまなか:人気のない荒れた山の中
おくる:死者を葬る、野辺送りをする
- 作者
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田辺福麻呂(福麻呂歌集所出)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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別れてもまたも逢ふべく思ほえば 心乱れて我れ恋ひめやも
- 次の歌
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勝鹿の真間の井見れば立ち平し 水汲ましけむ手児名し思ほゆ