墓の上の木の枝靡けり聞きしごと
茅渟壮士にし寄りにけらしも
- 歌の意味
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墓の上の木の枝がなびいている。聞いていたとおり、娘子の心は茅渟壮士に寄っていたらしい。
- 鑑賞
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巻第九 挽歌 1811
詞書は前の歌に続き「菟原処女が墓を見る歌一首 并せて短歌」の反歌
娘子の墓の上の木の枝が茅渟壮士の墓の方へなびいているのを見て、聞いていたとおり娘子の心は茅渟壮士に寄っていたらしいと詠む歌である。木の枝のなびきに、死後も変わらない娘子の心を読み取っている。
本巻の第千八百九首の長歌に添えられた二首目の反歌で、巻第九の巻末の歌である。長歌では、茅渟壮士が娘子の死を夢に見てすぐに後を追ったと語られており、娘子の心が茅渟壮士にあったという言い伝えを、墓の木の様子によって確かめている。
作者の高橋虫麻呂は奈良時代前期の歌人で、藤原宇合が常陸守であった頃にその下僚として仕えたと考えられている。各地の伝説や東国の風土を題材とした長歌に優れる。本歌は高橋虫麻呂歌集から採られたもので、虫麻呂自身の作を中心とすると考えられている。
初句「墓の上の」は、娘子の墓の上の、の意である。
二句「木の枝靡けり」は、木の枝がなびいている、の意で、ここで句切れとなる。
三句「聞きしごと」は、聞いていたとおり、の意である。言い伝えを指す。
四句「茅渟壮士にし」は、茅渟壮士の方に、の意で、「し」は強めの助詞である。茅渟は和泉国の海辺の地である。
結句「寄りにけらしも」は、心が寄っていたらしい、の意である。完了の「に」、根拠のある推量の「けらし」、詠嘆の「も」が付く。巻頭の第千六百六十四首の結句「寝ねにけらしも」と同じ「にけらしも」の形で結び、巻頭と巻末が呼応している。巻頭では鹿の声が聞こえないことから共寝を推し量り、巻末では枝のなびきから娘子の心を推し量っている。
なびく:風などで一方に傾き寄る
- 作者
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高橋虫麻呂(虫麻呂歌集所出)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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芦屋の菟原娘子の奥城を 行き来と見れば哭のみし泣かゆ
- 次の歌
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ひさかたの天の香具山この夕 霞たなびく春立つらしも