子らが手を巻向山に春されば
木の葉しのぎて霞たなびく
- 歌の意味
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巻向山に春が来ると、木々の葉を押し分けるようにして霞がたなびいている。
- 鑑賞
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巻第十 春雑歌 1815
詞書は前の歌に続き「春雑歌」
春を迎えた巻向山で、木々の葉を押し伏せるようにして霞がたなびく様子を詠んだ歌である。初句の「子らが手を」は愛しい娘の手を枕にするという意から「巻く」にかかる序詞で、春の山の景に恋のほのかな情趣を添えている。霞の量感を「しのぎて」と力強くとらえた点に、この歌の特色がある。本巻の第千八百十三首と同じく巻向の地を舞台としている。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「子らが手を」は、愛しい女性の手を枕として巻く意から「巻」にかかる。枕詞的な序で、「子ら」の「ら」は親愛を表す接尾語である。
二句「巻向山に」は巻向の地にある山である。前の句の「巻く」と掛かり合って地名を導き出し、第千八百十三首の「巻向の」と舞台を同じくする。
三句「春されば」の「さる」は季節や時が移ってくる意で、春になるとの意となる。「ば」は確定条件である。
四句「木の葉しのぎて」の「しのぐ」は押し伏せる、押し分ける意である。霞が木々の葉を押しのけるかのように広がる勢いを表している。
結句「霞たなびく」は一連に繰り返される句で、ここでは山全体を覆う霞の大きさを印象づけて結んでいる。
しのぐ:押し伏せる。押し分ける
さる:季節や時がやって来る
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に 霞たなびく春は来ぬらし
- 次の歌
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玉かぎる夕さり来ればさつ人の 弓月が岳に霞たなびく