子らが名に懸けのよろしき朝妻の
片山崖に霞たなびく
- 歌の意味
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愛しい娘の名として口にかけるのにふさわしい朝妻の、片側が山になった崖に霞がたなびいている。
- 鑑賞
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巻第十 春雑歌 1818
詞書は前の歌に続き「春雑歌」
朝妻の片山崖にたなびく霞を詠み、人麻呂歌集の春雑歌の一連を締めくくる歌である。「朝妻」という地名を、愛しい娘の名として呼ぶのにふさわしいとたたえ、地名そのものの響きを楽しんでいる。前歌の第千八百十七首も「朝妻山」を詠んでおり、二首続けて朝妻の地を舞台とし、ともに地名の「妻」に恋の情趣を重ねている。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「子らが名に」は愛しい娘の名としての意である。「子ら」の「ら」は親愛の接尾語で、前歌に見える夫婦の情景とゆるやかに呼応する。
二句「懸けのよろしき」は口にかけて呼ぶのにふさわしいの意である。「懸く」は言葉に出して言う意で、地名を恋人の名になぞらえてたたえている。
三句「朝妻の」は前歌と同じく葛城山麓の朝妻の地である。前歌の「朝妻山」を受け、二首で朝妻の地を詠み継いでいる。
四句「片山崖に」は片側が山となっている崖の意である。具体的な地形を示し、霞のかかる場所を絞り込んでいる。
結句「霞たなびく」は第千八百十二首以来の一連に共通する句であり、人麻呂歌集の春雑歌の結びとしてもう一度霞の景を据えている。
かく:言葉に出して言う。心にかける
かたやまぎし:片側が山になっている崖
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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今朝行きて明日には来なむと云子鹿丹 朝妻山に霞たなびく
- 次の歌
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うち靡く春立ちぬらし我が門の 柳の末に鴬鳴きつ