- 歌の意味
-
草木がなびく春がやって来たらしい。我が家の門の柳の梢で、鴬が鳴いた。
- 鑑賞
-
巻第十 春雑歌 1819
詞書「鳥を詠む」
家の門の柳の梢で鴬が鳴いたのを聞き、春の到来を確かめた歌である。身近な門の柳という生活の場の景に、鴬の声という確かな春の兆しをとらえ、季節の訪れを素直に喜んでいる。題詞「鳥を詠む」の一連の最初の歌で、本巻の第千八百十二首から続く霞による春の推定を、今度は鳥の声によって行う形となっており、視覚から聴覚へと春の兆しが移っている。
初句「うち靡く」は「春」にかかる枕詞である。春になって草木が柔らかくなびく様子から、春を導く。
二句「春立ちぬらし」は春が来たらしいの意で、「ぬ」は完了、「らし」は根拠ある推定である。ここで二句切れとなり、下の句にその根拠が示される。第千八百十四首の「春は来ぬらし」と同じ推定の形をとる。
三句「我が門の」は自分の家の門のの意である。身近な生活の場を示し、春の兆しを間近にとらえている。
四句「柳の末に」の「末」は梢、枝先の意である。芽吹き始めた柳の枝先という、春らしい細やかな景を据えている。
結句「鴬鳴きつ」の「つ」は完了の助動詞で、たった今鳴いたという確かな事実を示す。二句の推定の根拠を、この結句が明かしている。
うれ:梢、枝先
うちなびく:草木がなびく。「春」にかかる枕詞となる
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
子らが名に懸けのよろしき朝妻の 片山崖に霞たなびく
- 次の歌
-
梅の花咲ける岡辺に家居れば 乏しくもあらず鴬の声