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朝ゐでに来鳴く貌鳥汝れだにも
君に恋ふれや時終へず鳴く

歌の意味
朝の堰に来て鳴く貌鳥よ、お前でさえもあの方を恋しく思うのか、時を限らず鳴き続けている。
鑑賞
巻第十 春雑歌 1823

詞書は前の歌に続き「鳥を詠む」
 朝の堰に来て絶え間なく鳴く貌鳥に、自分の恋心を重ねた歌である。鳥の鳴き声を恋ゆえのものと見なし、鳥でさえ恋しさに鳴くのかと問いかけることで、作者自身の尽きない恋しさを浮かび上がらせている。前歌と同じく鳥に恋の思いを託す歌で、鳥を詠む一連に恋の情趣が続いている。

 初句「朝ゐでに」の「ゐで」は川の水をせき止めた堰のことである。朝の水辺という清々しい場面を設定している。
 二句「来鳴く貌鳥」の「貌鳥」は鳥の名で、カッコウとする説などがあり、確定していない。
 三句「汝れだにも」は鳥に呼びかける言葉で、「だに」はさえの意である。鳥でさえもと言うことで、作者自身の恋しさの深さを暗示する。
 四句「君に恋ふれや」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「鳴く」と係り結びをなす。鳥の鳴く理由を恋に求めて問いかけている。
 結句「時終へず鳴く」は時を限らず鳴き続けるの意である。四句の「や」を受けて連体形「鳴く」で結び、鳴きやまない声に作者の尽きぬ思いを重ねている。

ゐで:川の水をせき止めた堰
かほどり:鳥の名。カッコウとする説などがある
出典
万葉集
前の歌
我が背子を莫越の山の呼子鳥 君呼び返せ夜の更けぬとに
次の歌
冬こもり春さり来ればあしひきの 山にも野にも鴬鳴くも