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冬こもり春さり来ればあしひきの
山にも野にも鴬鳴くも

歌の意味
冬ごもりの季節が過ぎて春がやって来ると、山にも野にも鴬が鳴いている。
鑑賞
巻第十 春雑歌 1824

詞書は前の歌に続き「鳥を詠む」
 春の到来とともに、山にも野にも鴬の声が満ちていく様子を詠んだ歌である。「冬こもり」「あしひきの」という二つの枕詞を用いた整った調べで、春の広がりを大らかにとらえている。第千八百二十首の家の周りの鴬から、この歌では山野全体へと視野が大きく広がっている。

 初句「冬こもり」は「春」にかかる枕詞である。冬の間こもっていたものが春に現れ出る意からかかるとされる。
 二句「春さり来れば」は春がやって来るとの意である。第千八百十六首の「夕さり来れば」と同じ言い回しで、季節の到来を示す。
 三句「あしひきの」は「山」にかかる枕詞である。二つ目の枕詞を置くことで、歌の調べを荘重に整えている。
 四句「山にも野にも」は山にも野にもと並べて、鴬の声が至るところに満ちる広がりを表している。
 結句「鴬鳴くも」は第千八百二十一首と同じ結句で、「も」は詠嘆である。広大な春の山野に響く声を、感動をこめて言い収めている。

ふゆこもり:冬の間こもっていること。「春」にかかる枕詞となる
あしひき:「あしひきの」で「山」にかかる枕詞となる
出典
万葉集
前の歌
朝ゐでに来鳴く貌鳥汝れだにも 君に恋ふれや時終へず鳴く
次の歌
紫草の根延ふ横野の春野には 君を懸けつつ鴬鳴くも