峰の上に降り置ける雪し風の共
ここに散るらし春にはあれども
- 歌の意味
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峰の上に降り積もった雪が、風とともにここに散ってくるらしい。季節はもう春ではあるけれども。
- 鑑賞
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巻第十 春雑歌 1838
詞書は前の歌に続き「雪を詠む」
春になった麓に舞い散る雪を見て、峰に積もった雪が風に運ばれてきたのだろうと推し量る歌である。左注に「右一首筑波山にて作る」とあり、筑波山で詠まれたことがわかる。春の中の雪を峰の雪の名残と説明づける理知的な発想があり、結句「春にはあれども」に春の中の冬を受け止める心が表れている。
本巻の第千八百三十五首が春になったのだから雪は降らないはずだと詠んだのに対し、この歌は春なのに雪が散る理由を峰の雪に求めており、雪の一連の中で春の雪の由来を考える歌となっている。
初句「峰の上に」の「峰」は山の頂の意である。筑波山の山頂を指し、雪の出どころを示している。
二句「降り置ける雪し」は降り積もっている雪がの意で、「し」は強意の副助詞である。字余りの句となっている。
三句「風の共」の「共」はとともにの意である。風に吹かれて雪が運ばれる様子を示す。
四句「ここに散るらし」の「らし」は根拠ある推定である。目の前に舞う雪を根拠に、峰の雪が散ってきたと推し量り、ここで四句切れとなる。
結句「春にはあれども」は春ではあるけれどもの意である。字余りの句で、倒置によって季節とのずれを最後に添えている。
を:山の峰
むた:とともに
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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山の際に鴬鳴きてうち靡く 春と思へど雪降りしきぬ
- 次の歌
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君がため山田の沢にゑぐ摘むと 雪消の水に裳の裾濡れぬ