君がため山田の沢にゑぐ摘むと
雪消の水に裳の裾濡れぬ
- 歌の意味
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あなたのために山の田のほとりの沢でえぐを摘もうとして、雪解けの水に裳の裾が濡れてしまった。
- 鑑賞
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巻第十 春雑歌 1839
詞書は前の歌に続き「雪を詠む」
愛する人のために山田の沢でえぐを摘む女性が、雪解け水に裳の裾を濡らしたことを詠んだ歌である。冷たい雪解け水に濡れることもいとわずに若菜を摘む姿に、相手を思う一途な心が表れている。雪の一連の中で、雪そのものではなく雪解けの水を詠み、春の訪れの確かさを示している。古今和歌集の光孝天皇の「君がため春の野に出でて若菜摘む我が衣手に雪は降りつつ」と、君のために若菜を摘むという趣向が通い合う。
初句「君がため」はあなたのためにの意である。以下の行為がすべて愛する人のためであることを最初に示している。
二句「山田の沢に」は山の田のほとりの沢にの意である。山里の春の水辺を舞台としている。
三句「ゑぐ摘むと」の「ゑぐ」は水辺に生える草で、クログワイなどとされる。春の若菜摘みの習俗を示す。
四句「雪消の水に」は雪解けの水にの意である。雪の一連にあって、雪が解けて春が進んでいることを示す。
結句「裳の裾濡れぬ」の「裳」は女性が腰から下にまとう衣で、「ぬ」は完了である。濡れた裳の裾という具体的な姿に、一途な思いを託して結ぶ。
ゑぐ:水辺に生える草。クログワイ、セリなどとされる
ゆきげ:雪が解けること。雪解け
も:女性が腰から下にまとう衣
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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峰の上に降り置ける雪し風の共 ここに散るらし春にはあれども
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梅が枝に鳴きて移ろふ鴬の 羽白妙に沫雪ぞ降る