山の際の雪は消ずあるをみなぎらふ
川の沿ひには萌えにけるかも
- 歌の意味
-
山あいの雪はまだ消えずに残っているのに、水の満ちあふれる川の沿いでは、柳が芽吹いたことだ。
- 鑑賞
-
巻第十 春雑歌 1849
詞書は前の歌に続き「柳を詠む」
山あいにはまだ雪が消え残っているのに、水かさの増した川沿いでは柳が芽吹いたことを詠んだ歌である。前歌と同じく山あいの雪と川辺の柳とを対比するが、この歌では「みなぎらふ」の語によって、雪解け水で満ちあふれる川の勢いも描かれ、春の進みがより力強く表されている。前歌と対をなす一首である。
初句「山の際の」は前歌の初句「山の際に」とほぼ同じ句で、二首の対応を示している。
二句「雪は消ずあるを」は雪は消えずに残っているのにの意で、「を」は逆接を表す。字余りの句である。
三句「みなぎらふ」は水が満ちあふれるの意で、「ふ」は継続を表す。雪解け水で増水した川の様子を示す。
四句「川の沿ひには」は川に沿ったところではの意である。前歌の「川楊」と同じく川辺の柳を暗に示している。
結句「萌えにけるかも」は柳の一連の四首目の同じ結句である。主語の柳を省き、芽吹きの感動だけを示して結んでいる。
みなぎらふ:水が満ちあふれる
そひ:沿ったところ。ほとり
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
山の際に雪は降りつつしかすがに この川楊は萌えにけるかも
- 次の歌
-
朝な朝な我が見る柳鴬の 来居て鳴くべく森に早なれ