桜花時は過ぎねど見る人の
恋ふる盛りと今し散るらむ
- 歌の意味
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桜の花は、まだ散る時節は過ぎていないけれども、見る人が恋しく思う盛りのうちにと、今まさに散っているのだろう。
- 鑑賞
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巻第十 春雑歌 1855
詞書は前の歌に続き「花を詠む」
まだ散る時期ではないのに散っている桜を見て、人々に惜しまれる盛りのうちに散ろうとしているのだろうと推し量った歌である。散る桜に意志を認め、惜しまれるうちに身を引く潔さを見いだしている点に、後の時代の桜観にも通じる感性がうかがえる。前歌で待たれた桜が、この歌ではもう散り始めており、花の一連の中で時が進んでいる。
初句「桜花」は前歌で待たれていた桜である。花の一連の主役が梅から桜へと移っている。
二句「時は過ぎねど」は散る時期は過ぎていないけれどもの意で、「ね」は打ち消しの「ず」の已然形、「ど」は逆接である。
三句「見る人の」は見る人がの意で、次の「恋ふる」の主語となる。
四句「恋ふる盛りと」は恋しく思う盛りのうちにとの意である。見る人に最も惜しまれる時を選ぶかのような桜の心を推し量っている。
結句「今し散るらむ」の「し」は強意、「らむ」は現在の原因推量である。目の前で散る桜の理由を推し量って結ぶ。
さかり:物事の勢いが最も盛んな時
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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鴬の木伝ふ梅のうつろへば 桜の花の時かたまけぬ
- 次の歌
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我がかざす柳の糸を吹き乱る 風にか妹が梅の散るらむ