うつたへに鳥は食まねど縄延へて
守らまく欲しき梅の花かも
- 歌の意味
-
決して鳥がついばむというわけではないけれども、縄を張りめぐらして守りたいと思う梅の花であることよ。
- 鑑賞
-
巻第十 春雑歌 1858
詞書は前の歌に続き「花を詠む」
鳥がついばむわけでもないのに、縄を張って守りたくなるほど大切な梅の花を詠んだ歌である。実際の害がなくとも守りたいという思いに、梅の花を惜しみ愛する心の深さが表れている。梅を恋しい人のたとえと見て、大切な人を誰にも触れさせずに守りたいという恋の心を読み取る説もある。
初句「うつたへに」は下に打ち消しを伴って、決して、ひたすらにの意を表す。二句の「食まねど」と呼応している。
二句「鳥は食まねど」は鳥がついばむわけではないけれどもの意で、「ね」は打ち消しの「ず」の已然形、「ど」は逆接である。
三句「縄延へて」は縄を張りめぐらしての意である。大切なものを囲って守る行為を示す。
四句「守らまく欲しき」の「まく」は推量の「む」のク語法で、守りたいと思うの意となる。
結句「梅の花かも」の「かも」は詠嘆である。体言で梅の花を据え、それほどまでに愛しいという思いを示して結ぶ。
はむ:食べる。ついばむ
はふ:縄などを長く張りめぐらす
もる:見張って守る
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
年のはに梅は咲けどもうつせみの 世の人我れし春なかりけり
- 次の歌
-
馬並めて多賀の山辺を白栲に にほはしたるは梅の花かも