去年咲きし久木今咲くいたづらに
地にか落ちむ見る人なしに
- 歌の意味
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去年咲いた久木が今年も咲いている。むなしく地に落ちてしまうのだろうか、見る人もないままに。
- 鑑賞
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巻第十 春雑歌 1863
詞書は前の歌に続き「花を詠む」
去年と同じく今年も咲いた久木の花が、誰にも見られずに散っていくことを惜しむ歌である。去年と今年という時の繰り返しの中で、変わらず咲く花と、それを見る人がいないことの寂しさが対比されている。去年ともに花を見た人がもういないという悲しみを読み取ることもできる。次の第千八百六十七首にも「見る人なしに」の結句が見え、見る人のない花を惜しむ趣向が花の一連に繰り返される。
初句「去年咲きし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。去年の花の記憶を示している。
二句「久木今咲く」の「久木」はアカメガシワなどの木とされる。「今咲く」によって去年と今年とが並べられ、ここで二句切れとなる。
三句「いたづらに」はむなしく、無駄にの意である。花が顧みられずに散ることを惜しむ語である。
四句「地にか落ちむ」の「か」は疑問の係助詞で、「む」の連体形と係り結びをなす。散りゆく花の行方を案じている。
結句「見る人なしに」は見る人もないままにの意で、倒置によって花の寂しさの理由を最後に示している。
ひさぎ:木の名。アカメガシワ、キササゲなどとされる
つち:地面
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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雪見ればいまだ冬なりしかすがに 春霞立ち梅は散りつつ
- 次の歌
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あしひきの山の際照らす桜花 この春雨に散りゆかむかも