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かはづ鳴く吉野の川の滝の上の
馬酔木の花ぞはしに置くなゆめ

歌の意味
かじか蛙の鳴く吉野川の激流のほとりの馬酔木の花だ。決して端の方に置いたりするな。
鑑賞
巻第十 春雑歌 1868

詞書は前の歌に続き「花を詠む」
 吉野川の激流のほとりで手折ってきた馬酔木の花を、粗末に扱わないよう念を押す歌である。わざわざ遠い吉野から持ち帰った花への愛着が、「はしに置くなゆめ」という強い禁止の言葉に表れている。花を贈る相手に向けた言葉とも読め、花に託した思いの深さがうかがえる。花の一連の中で、桜に続いて馬酔木という別の花を取り上げている。

 初句「かはづ鳴く」は「吉野」を修飾する。「かはづ」は清流に住むカジカガエルで、澄んだ鳴き声で知られる。
 二句「吉野の川の」は吉野川のの意である。大和の南を流れる清流で、古くから名所として詠まれた。
 三句「滝の上の」の「滝」は激流、急流を指し、「上」はほとりの意である。「の」を重ねて場所を次々と絞り込んでいる。
 四句「馬酔木の花ぞ」の「ぞ」は強意の係助詞で、ここで句切れとなる。遠く吉野の激流のほとりに咲いていた花であることを強調する。
 結句「はしに置くなゆめ」の「な」は禁止の終助詞、「ゆめ」は決しての意で、倒置によって禁止を強めている。字余りの句である。

かはづ:カジカガエル。清流に住み、澄んだ声で鳴く
たき:激しく流れる水。急流
あしび:ツツジ科の低木。春に白い壺形の小花を房状につける
はし:端。隅
出典
万葉集
前の歌
阿保山の桜の花は今日もかも 散り乱ふらむ見る人なしに
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春雨に争ひかねて我が宿の 桜の花は咲きそめにけり