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見わたせば春日の野辺に霞立ち
咲きにほへるは桜花かも

歌の意味
見渡すと、春日の野辺に霞が立ち、美しく咲き映えているのは桜の花であろうか。
鑑賞
巻第十 春雑歌 1872

詞書は前の歌に続き「花を詠む」
 春日の野を見渡し、霞の立つ中に咲き映える桜の花をとらえた歌である。霞と桜という春の景物を遠景の中に重ね、春日野の春の広がりを大らかに描いている。霞の一連で詠まれた春日山の霞と、花の一連の桜とが一首の中で出会い、本巻の春雑歌の諸景が結び合わされている。

 初句「見わたせば」は見渡すとの意で、広い眺望を示す。
 二句「春日の野辺に」は春日野のあたりにの意である。本巻の第千八百四十三首から第千八百四十五首の霞の一連で詠まれた春日の地である。
 三句「霞立ち」は霞が立っての意である。遠景の霞の中に花が浮かぶ様子を示す。
 四句「咲きにほへるは」の「にほふ」は色美しく照り映える意、「る」は存続である。字余りの句となっている。
 結句「桜花かも」の「かも」は詠嘆を含む疑問である。霞の中に見える花を桜かと推し量って結ぶ。

にほふ:色美しく照り映える
出典
万葉集
前の歌
春されば散らまく惜しき梅の花 しましは咲かずふふみてもがも
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いつしかもこの夜の明けむ鴬の 木伝ひ散らす梅の花見む