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春の雨にありけるものを立ち隠り
妹が家道にこの日暮らしつ

歌の意味
ただの春の雨であったのに、雨宿りをして、あの子の家へ行く道の途中でこの一日を暮らしてしまった。
鑑賞
巻第十 春雑歌 1877

詞書「雨を詠む」
 恋人の家へ向かう途中で雨宿りをし、それがただの春雨であったと気づいたときには一日が暮れていたという歌で、題詞は「雨を詠む」である。小雨にすぎない春雨に足止めされ、会えずに一日を過ごしてしまった悔しさと、自分のためらいへの苦笑とがにじんでいる。花の一連で花を咲かせ散らすものとして詠まれた春雨が、ここでは恋の道を阻むものとして詠まれている。

 初句「春の雨に」は春の雨での意で、字余りの句である。
 二句「ありけるものを」の「けり」は気づきを表し、「ものを」は逆接、詠嘆の接続助詞である。ただの春雨だったのにと気づいた後悔を示す。
 三句「立ち隠り」は物陰に立って雨を避けての意で、雨宿りをすることを示す。
 四句「妹が家道に」の「家道」は家へ行く道の意である。恋人の家へ向かう途中であったことを示す。
 結句「この日暮らしつ」の「つ」は完了である。一日を無為に過ごしてしまったことを示して結ぶ。

いもがいへぢ:恋しい人の家へ行く道
たちかくる:物陰に立って身を隠す。雨を避ける
出典
万葉集
前の歌
朝霞春日の暮は木の間より 移ろふ月をいつとか待たむ
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今行きて聞くものにもが明日香川 春雨降りてたぎつ瀬の音を