春日野に煙立つ見ゆ娘子らし
春野のうはぎ摘みて煮らしも
- 歌の意味
-
春日野に煙が立つのが見える。娘たちが春の野のよめなを摘んで煮ているらしい。
- 鑑賞
-
巻第十 春雑歌 1879
詞書「煙を詠む」
春日野に立ちのぼる煙を見て、娘たちが摘んだよめなを煮ているのだろうと推し量る歌で、題詞は「煙を詠む」である。遠くの煙という手がかりから、野で若菜摘みを楽しむ娘たちの姿を想像しており、のどかな春の野の風俗が生き生きと伝わる。本巻の第千八百三十九首のゑぐ摘みと同じく、春の若菜摘みの習俗を詠んだ歌である。
初句「春日野に」は奈良の都の東に広がる春日野にの意である。
二句「煙立つ見ゆ」は煙が立つのが見えるの意で、ここで二句切れとなる。
三句「娘子らし」の「娘子ら」は若い娘たちの意、「し」は強意の副助詞である。
四句「春野のうはぎ」の「うはぎ」はキク科のヨメナのことで、春の若菜として食された。
結句「摘みて煮らしも」の「らし」は根拠ある推定、「も」は詠嘆である。煙を根拠に娘たちの若菜摘みを推し量って結ぶ。
うはぎ:ヨメナの古名。春の若菜として摘まれた
をとめ:若い娘
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
今行きて聞くものにもが明日香川 春雨降りてたぎつ瀬の音を
- 次の歌
-
春日野の浅茅が上に思ふどち 遊ぶ今日の日忘らえめやも