古典和歌stream

霞立つ春の長日を恋ひ暮らし
夜も更けゆくに妹も逢はぬかも

歌の意味
霞の立つ春の長い一日を恋しく思って暮らし、夜も更けていくのに、あの子は逢ってくれないものか。
鑑賞
巻第十 春相聞 1894

詞書は前の歌に続き「春相聞」
 霞の立つ春の長い一日を恋しさのうちに過ごし、夜が更けても逢えない恋人を待ちわびる歌である。春の日の長さが、恋しさに耐える時間の長さとして感じられている。昼から夜へと時間が進む中で、なお逢えない切なさが深まっていく。
 作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。

 初句「霞立つ」は霞の立つの意で、春の日を修飾している。
 二句「春の長日を」は春の長い一日をの意である。日の長い春の昼を示す。
 三句「恋ひ暮らし」は恋しく思いながら一日を過ごしての意である。
 四句「夜も更けゆくに」の「に」は逆接を表す。昼に続いて夜も更けていく時間の経過を示す。
 結句「妹も逢はぬかも」の「ぬかも」は打ち消しの疑問で、願望を表す。逢ってくれないものかと願って結ぶ。

こひくらす:恋しく思いながら日を過ごす
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
出でて見る向ひの岡に本茂く 咲きたる花のならずはやまじ
次の歌
春さればまづさきくさの幸くあらば 後にも逢はむな恋ひそ我妹