春さればしだり柳のとををにも
妹は心に乗りにけるかも
- 歌の意味
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春になるとしだれ柳がたわわにしなうように、あの子は私の心にすっかり乗りかかってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十 春相聞 1896
詞書は前の歌に続き「春相聞」
春のしだれ柳が枝もたわむほどしなう様子に、恋人が心に重くのしかかって離れない思いを重ねた歌で、人麻呂歌集の春相聞の一連を締めくくる。「妹は心に乗る」という表現は、恋しい人のことが心から離れないことを言い表す万葉集特有の言い方で、柳のたわむ姿がその重さを視覚的に示している。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「春されば」は春になるとの意で、前歌と同じ初句である。
二句「しだり柳の」は枝の垂れ下がった柳のの意で、本巻の第千八百五十二首にも見える語である。
三句「とををにも」の「とをを」は枝がたわみしなう様子を表す。上の句は、心に重くかかる様子を導く序の働きをしている。
四句「妹は心に」は恋しい人が私の心にの意である。
結句「乗りにけるかも」の「乗る」は心に乗りかかって離れない意、「けり」「かも」は詠嘆である。恋人の存在の重さを示して結ぶ。
のる:心に乗りかかる。心から離れなくなる
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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春さればまづさきくさの幸くあらば 後にも逢はむな恋ひそ我妹
- 次の歌
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春さればもずの草ぐき見えずとも 我れは見やらむ君があたりをば