今さらに君はい行かじ春雨の
心を人の知らずあらなくに
- 歌の意味
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今さらあなたは出て行きはしないだろう。春雨の心、あなたを引き留めようと降る雨の心を、人が知らないわけではないのだから。
- 鑑賞
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巻第十 春相聞 1916
詞書は前の歌に続き「雨に寄す」
春雨が降り出したのを、恋人を引き留めようとする雨の心と見なし、今さら出て行くことはないだろうと詠んだ歌である。雨に意志を認めて自分の引き留めたい思いを代弁させる、機知に富んだ表現である。前歌が春雨をものともせず恋人のもとへ来た歌であるのに対し、この歌は春雨を口実に恋人を引き留めようとしており、来る側と引き留める側とが対をなしている。
初句「今さらに」は今となってはの意である。
二句「君はい行かじ」の「い」は接頭語、「じ」は打ち消し推量で、あなたは出て行かないだろうの意である。ここで二句切れとなる。
三句「春雨の」は次の「心」にかかり、春雨の心の意となる。雨を擬人化している。
四句「心を人の」は心を人がの意で、「人」は恋人を指すとも、世間の人を指すとも解される。
結句「知らずあらなくに」の「なくに」は打ち消しのク語法に「に」の付いた形で、知らないわけではないのにの意となる。倒置によって理由を最後に示している。
いゆく:行く。「い」は接頭語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が背子に恋ひてすべなみ春雨の 降るわき知らず出でて来しかも
- 次の歌
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春雨に衣はいたく通らめや 七日し降らば七日来じとや