- 歌の意味
-
今、春の山に流れて行く雲のように、行き別れてしまうのだろうか。こんなにも恋しいのに。
- 鑑賞
-
巻第十 春相聞 1923
詞書「雲に寄す」
春の山に流れ去っていく雲のように、恋しい人と別れていかねばならない悲しみを詠んだ歌で、題詞は「雲に寄す」である。山のかなたへ離れていく雲の姿が、別れの避けがたさと名残惜しさを印象づけている。原文の結句は「こほしきものを」と訓まれ、恋しさを強く訴えている。
初句「白真弓」は「張る」の音から「春」にかかる枕詞である。白木の真弓の意である。
二句「今春山に」は今、春の山にの意である。
三句「行く雲の」は流れて行く雲のようにの意で、上の句は「行き」を導く序となっている。
四句「行きや別れむ」の「や」は疑問の係助詞で、「む」の連体形と係り結びをなす。行き別れてしまうのだろうかと嘆く。
結句「恋しきものを」の「ものを」は逆接、詠嘆の接続助詞である。恋しいのにと嘆いて結ぶ。
しらまゆみ:白木の真弓。「張る」の音から「春」などにかかる枕詞となる
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
梅の花咲きて散りなば我妹子を 来むか来じかと我が松の木ぞ
- 次の歌
-
大夫の伏し居嘆きて作りたる しだり柳のかづらせ我妹