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朝戸出の君が姿をよく見ずて
長き春日を恋ひや暮らさむ

歌の意味
朝、戸を出て帰って行くあなたの姿をよく見ないままに、長い春の日を恋しく思いながら過ごすことになるのだろうか。
鑑賞
巻第十 春相聞 1925

詞書「別れを悲しぶ」
 朝に帰っていく恋人の姿をよく見送れなかったため、長い春の日を恋しさの中で過ごさねばならないと嘆く歌で、題詞は「別れを悲しぶ」である。後朝の別れの名残惜しさが、長い春の日の時間の長さとともに表れている。本巻の第千九百十四首などと同じく、長い春の日を恋しさの中で過ごす嘆きを詠んでいる。

 初句「朝戸出の」は朝、戸を開けて出て行くの意である。夜を共にした恋人が朝に帰っていく場面を示す。
 二句「君が姿を」は恋人の姿をの意である。
 三句「よく見ずて」はよく見ないでの意である。名残惜しさを示す。
 四句「長き春日を」は長い春の日をの意で、本巻の第千九百二十一首と同じ句である。
 結句「恋ひや暮らさむ」の「や」は疑問の係助詞で、「む」の連体形と係り結びをなす。長い一日を恋しく過ごすことを嘆いて結ぶ。

あさとで:朝、戸を開けて出て行くこと
出典
万葉集
前の歌
大夫の伏し居嘆きて作りたる しだり柳のかづらせ我妹
次の歌
春山の馬酔木の花の悪しからぬ 君にはしゑや寄そるともよし