黙もあらむ時も鳴かなむひぐらしの
物思ふ時に鳴きつつもとな
- 歌の意味
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何事もなく黙っていられる時にこそ鳴いてほしい。ひぐらしが、物思いをしている時に限って、むやみに鳴き続けることだ。
- 鑑賞
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巻第十 夏雑歌 1964
詞書「蝉を詠む」
物思いに沈んでいる時に限って鳴くひぐらしの声を嘆く歌で、題詞は「蝉を詠む」である。平静な時に鳴くならばよいのに、心の沈む時に鳴かれると思いがいっそう深まるというやるせなさが表れている。ひぐらしの物悲しい声が、物思いの心と響き合っている。春雑歌の第千八百二十六首と同じく「鳴きつつもとな」の結句をもち、鳥や虫の声がむやみに心をかき立てるという嘆きが季節を越えて見られる。
初句「黙もあらむ」は黙っていられるような、何事もないの意で、字余りの句である。
二句「時も鳴かなむ」の「なむ」は他に対する願望の終助詞で、鳴いてほしいの意である。ここで二句切れとなる。
三句「ひぐらしの」はカナカナと鳴く蝉で、夕暮れに物悲しく鳴く声で知られる。
四句「物思ふ時に」は物思いをしている時にの意である。
結句「鳴きつつもとな」の「もとな」はむやみにの意である。第千八百二十六首と同じ結句で、心をかき乱す声を嘆いて結ぶ。
もだ:黙っていること。何もしないでいること
ひぐらし:蝉の一種。夕暮れなどにカナカナと鳴く
- 出典
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万葉集
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かくばかり雨の降らくに霍公鳥 卯の花山になほか鳴くらむ
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