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野辺見ればなでしこの花咲きにけり
我が待つ秋は近づくらしも

歌の意味
野辺を見るとなでしこの花が咲いていた。私が待つ秋は近づいてきたらしい。
鑑賞
巻第十 夏雑歌 1972

詞書は前の歌に続き「花を詠む」
 野辺になでしこの花が咲いているのを見て、待ちわびる秋が近づいたことを知る歌である。花の開花を季節の到来の兆しとする構図は、本巻の冒頭の第千八百十二首が霞によって春を知ったのと同じで、夏の終わりに秋を待つ心が表れている。秋を待つ理由は明示されないが、七夕の逢瀬や恋人の訪れを待つ心とも読める。

 初句「野辺見れば」は野辺を見るとの意である。
 二句「なでしこの花」は前々歌の第千九百七十首と同じくなでしこを詠み、字余りの句である。
 三句「咲きにけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、ここで三句切れとなる。
 四句「我が待つ秋は」は私が待っている秋はの意である。
 結句「近づくらしも」の「らし」は根拠ある推定、「も」は詠嘆である。花を根拠に秋の近いことを推し量って結ぶ。

なでしこ:ナデシコ科の草花。夏から秋に淡紅色の花を咲かせる
出典
万葉集
前の歌
雨間明けて国見もせむを故郷の 花橘は散りにけむかも
次の歌
我妹子に楝の花は散り過ぎず 今咲けるごとありこせぬかも