古典和歌stream

このころの恋の繁けく夏草の
刈り掃へども生ひしくごとし

歌の意味
このごろの恋の思いの絶え間ないことは、夏草が刈り払っても刈り払っても、次々と生い茂ってくるようなものだ。
鑑賞
巻第十 夏相聞 1984

詞書は前の歌に続き「草に寄す」
 このごろの恋の思いの絶え間なさを、刈っても刈っても生い茂る夏草にたとえた歌である。払っても払っても湧いてくる恋心の激しさが、夏草の生命力によって力強く表されている。前歌が夏草を噂の比喩としたのに対し、この歌は夏草を恋心そのものの比喩としている。

 初句「このころの」はこのごろのの意である。
 二句「恋の繁けく」の「繁けく」は「繁し」のク語法で、恋の絶え間ないことはの意となる。
 三句「夏草の」は比喩の対象である。
 四句「刈り掃へども」は刈り払ってもの意で、「ども」は逆接である。
 結句「生ひしくごとし」の「しく」は重なる、しきりにする意で、次々と生い茂るようだの意となる。比喩を言い切って結ぶ。

かりはらふ:刈り払う
おひしく:次々と生い茂る
出典
万葉集
前の歌
人言は夏野の草の繁くとも 妹と我れとし携はり寝ば
次の歌
ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひば まこと我が命常ならめやも