ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひば
まこと我が命常ならめやも
- 歌の意味
-
葛の這う夏の野の茂りのように、こんなに絶え間なく恋い続けたならば、本当に私の命は無事でいられようか。
- 鑑賞
-
巻第十 夏相聞 1985
詞書は前の歌に続き「草に寄す」
葛の這う夏野のように繁く恋い続けたならば、自分の命ももたないだろうと嘆く歌である。夏野に蔓延る葛の茂りが恋の激しさを示し、恋に命を削られる思いが率直に表れている。前の二首に続き、夏野の草の茂りを恋の比喩とする一連の三首目である。
初句「ま葛延ふ」の「ま」は接頭語で、葛の這うの意である。
二句「夏野の繁く」は夏野のように繁くの意で、上の句は「繁く」を導く序となっている。
三句「かく恋ひば」の「ば」は仮定で、このように恋うならばの意である。
四句「まこと我が命」は本当に私の命はの意で、字余りの句である。
結句「常ならめやも」の「めやも」は反語で、無事でいられようか、いやいられないの意である。
まくず:葛。「ま」は接頭語
つね:変わらないこと。無事であること
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
このころの恋の繁けく夏草の 刈り掃へども生ひしくごとし
- 次の歌
-
我れのみやかく恋すらむかきつはた 丹つらふ妹はいかにかあるらむ