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片縒りに糸をぞ我が縒る我が背子が
花橘を貫かむと思ひて

歌の意味
片縒りに糸を私は縒っている。あの方の家の花橘を、この糸に通そうと思って。
鑑賞
巻第十 夏相聞 1987

詞書「花に寄す」
 恋人の家の花橘を貫こうと、片縒りの糸を縒る女性の姿を詠んだ歌で、題詞は「花に寄す」である。「片縒り」には片思いの意が響いているとも考えられ、相手の家の花を自分の糸に通したいという願いに、恋人と結ばれたいという思いが託されている。夏雑歌の第千九百六十七首などで詠まれた花橘を玉に貫く風俗が、恋の比喩となっている。

 初句「片縒りに」は一方向にだけ縒ることで、片思いの意を響かせている。
 二句「糸をぞ我が縒る」の「ぞ」は強意の係助詞で、「縒る」の連体形と係り結びをなす。ここで二句切れとなる。
 三句「我が背子が」は女性が恋人を呼ぶ語で、あの方のの意である。
 四句「花橘を」は恋人の家の花橘をの意である。
 結句「貫かむと思ひて」の「む」は意志である。倒置によって糸を縒る目的を最後に示して結ぶ。

かたより:糸を一方向にだけ縒ること
よる:糸をねじり合わせる
ぬく:玉などに緒を通す
出典
万葉集
前の歌
我れのみやかく恋すらむかきつはた 丹つらふ妹はいかにかあるらむ
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鴬の通ふ垣根の卯の花の 憂きことあれや君が来まさぬ