卯の花の咲くとはなしにある人に
恋ひやわたらむ片思にして
- 歌の意味
-
卯の花が咲くようには心を開いてくれない人に、恋い続けるのだろうか、片思いのままで。
- 鑑賞
-
巻第十 夏相聞 1989
詞書は前の歌に続き「花に寄す」
卯の花が咲くようには心を開いてくれない人を、片思いのまま恋い続けることを嘆く歌である。花が咲くことを心を開くことにたとえ、一向に応えてくれない相手への報われない思いが表れている。前歌に続き卯の花を恋の比喩とする歌で、前歌が来ない恋人を嘆いたのに対し、この歌は心を開かない相手を嘆いている。
初句「卯の花の」は比喩の対象である。
二句「咲くとはなしに」は咲くというのではなしにの意で、心を開くことがないさまを示す。
三句「ある人に」はそのような人にの意である。
四句「恋ひやわたらむ」の「や」は疑問の係助詞で、「む」の連体形と係り結びをなす。
結句「片思にして」は片思いのままでの意で、倒置によって恋のあり方を最後に示している。
かたもひ:片思い
こひわたる:恋い続ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
鴬の通ふ垣根の卯の花の 憂きことあれや君が来まさぬ
- 次の歌
-
我れこそば憎くもあらめ我がやどの 花橘を見には来じとや