我が恋を嬬は知れるを行く舟の
過ぎて来べしや言も告げなむ
- 歌の意味
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私の恋心を妻は知っているのに、行く舟がそのまま通り過ぎて来てよいものか。せめて言葉だけでも伝えてほしい。
- 鑑賞
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巻第十 秋雑歌 1998
詞書は前の歌に続き「七夕」
織女の立場から、自分の思いを知っている彦星が、舟で通り過ぎるように言葉もかけずにいてよいものかと訴える歌と考えられる。訓読では「嬬」を用いて相手を示し、言葉だけでも伝えてほしいという切実な願いが表れている。本巻の第千九百九十六首の舟の着く喜びに対し、この歌は舟が通り過ぎてしまうことへの不安を詠んでいる。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「我が恋を」は私の恋心をの意である。
二句「嬬は知れるを」の「嬬」はつま、配偶者の意で、「を」は逆接である。
三句「行く舟の」は行く舟のようにの意で、次の「過ぎて」を導く。
四句「過ぎて来べしや」の「べし」は当然、「や」は反語で、通り過ぎて来てよいものかの意である。ここで四句切れとなる。
結句「言も告げなむ」の「なむ」は他に対する願望で、せめて言葉だけでも伝えてほしいの意である。
つま:夫婦の一方から他方を呼ぶ語
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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久方の天の川原にぬえ鳥の うら歎げましつすべなきまでに
- 次の歌
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赤らひく色ぐはし子をしば見れば 人妻ゆゑに我れ恋ひぬべし