我が恋ふる丹のほの面わこよひもか
天の川原に石枕まく
- 歌の意味
-
私が恋い慕う、頬の赤く美しい顔のあの人は、今夜も天の川原で石を枕にして寝ているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十 秋雑歌 2003
詞書は前の歌に続き「七夕」
恋い慕う美しい織女が、今夜も天の川原で石を枕に独り寝しているのだろうかと、彦星が思いやる歌である。頬の赤く美しい顔という具体的な面影と、石枕という冷たく寂しい独り寝の姿との対比が、逢えない夜の切なさを印象づけている。
作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。
初句「我が恋ふる」は私が恋い慕うの意である。
二句「丹のほの面わ」の「丹のほ」は赤く色づいている意、「面わ」は顔の意である。頬の赤く美しい顔を示す。
三句「こよひもか」の「か」は疑問の係助詞で、結句の「まく」と係り結びをなす。
四句「天の川原に」は天の川の川原にの意である。
結句「石枕まく」は石を枕にして寝るの意である。独り寝の寂しさを思いやって結ぶ。
にのほ:赤く色づいていること
おもわ:顔。顔つき
いしまくら:石の枕
まく:枕にする
- 作者
-
柿本人麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
八千桙の神の御代よりともし妻 人知りにけり継ぎてし思へば
- 次の歌
-
己夫にともしき子らは泊てむ津の 荒礒巻きて寝む君待ちかてに