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白雲の五百重に隠り遠くとも
宵さらず見む妹があたりは

歌の意味
白雲が幾重にも重なって隠れ、遠く離れていても、毎晩欠かさず見よう、妻の住むあたりは。
鑑賞
巻第十 秋雑歌 2026

詞書は前の歌に続き「七夕」
 白雲が幾重にも重なって隠し、遠く離れていても、毎晩欠かさず妻の住むあたりを眺めようと誓う彦星の歌である。逢えない日々にも心を通わせようとする一途な思いが表れている。本巻の第二千八首の「夜霧に隠り遠くとも」と同じ構文で、夜霧と白雲とを替えて遠く隔てられた思いを詠んでいる。春相聞の第千八百九十七首の、恋人の住むあたりを見やろうという歌とも通じる。
 作者の柿本人麻呂は飛鳥時代、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。この歌は左注によって「柿本人麻呂歌集」に出ると記される歌で、人麻呂自身の作か、人麻呂が書き留めた他人の歌かは定かでない。

 初句「白雲の」は白い雲のの意である。
 二句「五百重に隠り」は幾重にも重なって隠れての意である。
 三句「遠くとも」の「とも」は逆接の仮定で、第二千八首の三句と同じ句である。
 四句「宵さらず見む」の「さらず」は欠かさずの意、「む」は意志である。ここで四句切れとなる。
 結句「妹があたりは」は妻の住むあたりはの意で、倒置によって眺める対象を最後に示している。

いほへ:幾重にも重なること
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
万代に照るべき月も雲隠り 苦しきものぞ逢はむと思へど
次の歌
我がためと織女のそのやどに 織る白栲は織りてけむかも